SSブログ

ジョン・エヴァレット・ミレイ展 [ザ・ミュージアム]

          チラシ.jpg

「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」が、 東京・渋谷の Bunkamuraザ・ミュージアムで、開催されています。
会期は、 2008年8月30日(土)~10月26日(日)


ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829~96)は、19世紀のイギリスの画家で、晩年にはロイヤル・アカデミーの会長に選任されるという、当時から高い名声を博した画家でしたが、没後110年以上を過ぎた現在でも、その人気は衰えていません。

今回の展覧会は、ロンドンのテート・ブリテンで2007年9月から始まった巡回展で、今年の春にアムステルダムのゴッホ美術館での開催後、日本で展示されるものです。
また、日本では既に6月7日(土)~8月17日(日)に、福岡県の北九州市立美術館で、同展が開催されています。

今回のミレイ展で、もっとも注目されている作品は、告知看板やチラシにも印刷されている「オフィーリア」です。

 

                                          ミレイ展  図録表紙

         図録表紙.jpg

         

         柳の木が一本、小川のうえに差しかかって、
         白い葉裏を流れの鏡に映しているところ。
         あの娘(こ)は柳の葉を使って、きんぽうげ、いらくさ、ひなぎく、
         それに口さがない羊飼いたちが淫らな名で呼び、
         純潔な乙女たちは死人の指と呼んでいる紫蘭をそえて、
         きれいな花環を上手につくり、その花の冠を枝垂れた枝に
         掛けようと、よじ登った途端、枝は情(つれ)なく折れて、
         形見の花環もろとも、哀れにむせぶ小川に落ちました。
         裳裾はひろがり、しばらくは人魚のように川面をただよいながら、
         古い讃美歌を口ずさんでいたといいます。

                          ハムレット   第四幕 第七場 より

                                    シェイクスピア 作
                                    野島秀勝 訳
                                         岩波文庫
 

ミレイの代表作と言える「オフィーリア」は、敢えて断るまでもなく、シェイクスピアの「ハムレット」に題材を採って描かれた作品です。

ミレイの「オフィーリア」は、その制作段階から、様々なエピソードに彩られた作品です。
その中で、今回の展覧会で知った一つのエピソードをここに書いておくことにします。

この作品が、初めて公開された折、展示されていたギャラリーに、ある植物学の教授が、学生たちを引率してやって来たそうです。
その教授は、「オフィーリア」の絵の前に立って、画面に描かれた花々を指しながら、植物学の講義を始めたということです。

このエピソードは、今回の展覧会の会場内で上映されていた、ビデオ映像の中で、ミレイの孫が伝え聞いた話として紹介されていましたが、僕にはなんとも興味深く感じられる逸話でした。

「オフィーリア」の画面には、様々な植物が精緻に描かれていますが、その描写は植物学的に見ても、非常に正確なものであることを示す逸話なのだと思います。

 

           初めての説教 部分.jpg

                                         初めての説教(部分)

ミレイの作品には、これまでにも日本で公開されたものもあります。
1989年に東京都美術館で開催された「テート・ギャラリー展」には、「オフィーリア」も出展されていましたし、2003年に東京藝術大学の大学美術館で開催された「ヴィクトリアン・ヌード」展にも今回出展の「遊歴の騎士」が展示されていました。

これほど大規模なミレイの回顧展が開催されるのは、勿論日本では初めてのことですが、本国のイギリスでも、久々のことであるそうです。

ミレイの作品の画題は、多岐に渡っており、それぞれに素晴らしい作品がありますが、上に掲げた「初めての説教」を嚆矢とする「ファンシー・ピクチャー」と呼ばれる作品群は、その愛らしさや美しさから、多くの人の心を惹き付けているようです。

今回展示されていたファンシー・ピクチャーには、少し前にこのブログの記事でも取り上げた、上野の国立西洋博物館所蔵の「あひるの子」も含まれていて、何度も目にしている絵画でありながら、何故かとても新鮮な感覚で、観ることが出来ました。

やはり、 僕も一連のファンシー・ピクチャーには、とても心惹かれますが、今回は別のジャンルの作品で、些か違った意味で興味を惹いた作品がありました。

 

                     しゃべってくれ.jpg

                                        しゃべってくれ !

それが、この「しゃべってくれ ! 」です。

この作品の左側に描かれた女性は、実は幽霊なのだそうです。
それは、右側で片手を伸ばしている男性の嘗ての恋人で、花嫁衣装を着た幽霊となって、男性の寝室に出現した場面を描いているのだといいます。

図録の解説によれば、ミレイは超自然現象に関心を持っていたそうですが、この絵の女性の姿に就いて、これは幽霊なのか女性なのか?という問い掛けに「狙いはそこさ」「私にも見分けはつかない」と答え、絵の中の右側の男性を指して「あの男もそうなんだよ」と語ったそうです。

だとすると、これはミレイの描いた幽霊画なのでしょうか?

幽霊や妖怪が好きな僕としては、絵画作品としての好き嫌いは別として、とても興味深い作品と言えます。

 

 

今回のミレイ展を観にいったのは、開催2日目の8月31日のことでした。
その後、出来るだけ早くブログの記事にする予定でしたが、日々の出来事に取り紛れていた上に、今回の展覧会に出展された作品が多く、文章に纏めることが出来兼ねていました。

と、いう事で、既にミレイ展の会期も後半に入ってしまった上、内容的にも全く纏まりのない記事になってしまったことを、どうぞご容赦願います。

 

   展覧会の、会期・アクセス等についての詳細は、以下のサイトをご参照ください。

     Bunkamura ミレイ展 公式サイト

 

   また、「オフィーリア」の絵画作品に就いては、So-netブログのlapisさんが、素晴らしい記事を
   書かれていらっしゃますので、興味のある方は、是非ご覧になることをお薦めします。

    カイエ  ジョン・エヴァレット・ミレイ『オフィーリア』 

 


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 2

コメント 2

lapis

albireoさん、TBありがとうございます。
また、拙記事を紹介していただき、感謝しております。
『オフィーリア』も素晴らしかったのですが、
ファンシー・ピクチャーもとっても楽しかったです。
特に、『きらきらした瞳』が気に入りました。
>だとすると、これはミレイの描いた幽霊画なのでしょうか?
僕は、疑問すら持たずに、幽霊画だと思っていました。(笑)
今回は、残念ながらお会いすることが出来ませんでしたが、
機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
by lapis (2008-10-10 23:03) 

ナナ

・・・なんか場違いなコメントで申し訳ないのですが
この絵を観て、ふと昨年、祖母が亡くなった時の事を思い出しました

祖母ね、私たちの結婚式を目前にして他界したんですけどね
その亡くなった日に、私の旦那の夢枕にたったらしいんですよ

夢が現実か分からない妙にリアルな夢だったそうで、旦那さんもビックリして、恐くはなかったらしいけど、ドキドキして眠れなくなったらしいです

「ナナちゃんを宜しくね」と祖母は笑って消えていったそうです
もうね、私、ちょいと泣きました
ばあちゃん、何も死んでまで、そんなサプライズ用意しなくてもいいのにね
by ナナ (2009-07-07 20:51) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。