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五人組御仕置帳 -1- [古書・古文書]

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 この文書の表題は『五人組御仕置帳』となっていますが、普通には『五人組帳』 と呼ばれることが多いように思います。

 『五人組』は、近世の村方及び町方支配のために設けられた、五戸づつの単位による近隣組織です。
 その主な目的は、相互監視と連帯責任にあるとされますが、住民同士の互助と言う意味合いもあったようにも見受けられます。

 『五人組帳』は、五人組の構成員が署名押印した帳簿と、守るべき法令を記した『前書』とで構成されていましたが、この記事で紹介するものは、その『前書』とされる部分です。

  『前書』は、時代や地域に依って、その内容には異同があるようですが、そこに書かれた法令は、村役人によって、村人への定期的な読み聞かせが行われていたとされています。
 また、手習い所や寺子屋での教材としても使われていたようです。

 この資料を子細に見ると、161年前の「安政二年(1855年)五月」に、現在の山梨県である「甲斐国八代郡久保村」で、更に古い時代の「寛文四年(1664年)」の文書を書き写して作成したものであることが分ります。
 恐らくは、名主か組頭を務めていた人が、業務上の資料として書き写したのではないかと思われます。

 因みに、江戸時代の久保村は、当初は幕府領でしたが、後に甲府藩領となり、享保年間に再び幕府領となったそうです。

 尚、以下の画像は、原則的にページ毎ではなく、画像を切り張りして一つ書の項目ごとにまとめて、解読文と対応するようにしてあります。(一つの項目が長いものは、適宜分割しました)

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      五人組御仕置帳
         条々
   一 前々従 公儀度々出候御法度
     書之趣弥以堅相守御制法之儀
       不相背様ニ村中小百姓下々迄
     可申付事

              五人組御仕置帳

                条々

       一 前々より 公儀、度々出し候 御法度

         書きの趣 いよいよ堅く相守り 御制法の儀 

         相背かざるように 
村中 小百姓 下々まで

         申し付くべき事
        

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   一 五人組之儀町場者家並在郷者
     最寄次第五軒宛組合子供併
     下人店貸借地之者に至まで
     悪事不仕様ニ組中無油断
     可命僉儀若し徒者有之名主之
     申付をも不用候者可訴之事

      一 五人組の儀、町場は家並、在郷は

        最寄り次第、五軒宛組合、子供 併びに

        下人、店貸 借地の者に至るまで

        悪事 仕らざるように、組中油断無く

        僉議せしむべし 若しいたずら者これ有り名主の

        申し付けをも用いず候は 訴えべきの事

  この部分で、一行目の「町場」の「場」は、現在の常用漢字とは異なる、以下の図のような「異体字」で書かれています。

       2016-05-08 ba.jpg

 3行目の「店貸」の「貸」の文字の部分は、一旦「借」と書いた上から張り紙をして、「貸」と訂正されています。
 文脈から見ると、「店借 借地の者」の方が正しいような気もしますが、大元の文書がそのようになっていたのかも知れません。

 5行目の「可命僉儀」の部分で、「命」の文字が小さく書かれていますが、これは書き忘れて、後から書き足したものと思われます。

 また、「僉儀」に就いては「詮議」と同義ですが、現代ではあまり見ない「僉」の字が使われています。ただ、実際の文字は、どうも下図のような異体字が用いられているように思われます。

             2016-05-08 (5)sen.jpg

 更に、「僉儀」の「儀」は、本来は「議」ですが、ここでは誤った文字が使われています。

 また、文中にある「徒者」は、「いたずらもの」と読みますが、それは現在の「いたずらもの」とは、些かニュアンスが異なるように思います。近世文書に描かれる「徒者」とは、「ならず者」や「無法者」を指すような、より悪辣なイメージの方が強そうです。
     

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   一 隔年宗門改帳三月迄之内
     可指出候若し御法度之宗門之者
     有之ハ早速可申出候切支丹
     宗門之儀御高札之旨相守
     宗門帳之通人別入念可相改
     宗門帳済候而後召抱候下人等
     寺請状別紙ニ可取置事

       一 隔年 宗門改め帳 三月迄の内

        指し出しべく候 若し御法度の宗門の者

        これ有るは、早速申し出でべく候、切支丹

        宗門の儀、御高札の旨相守り

        宗門帳の通り、人別入念に相改むべし

        宗門帳、済候て後、召し抱え候下人等

        寺請け状別紙に取り置く事

      0005.jpg

   一 五人組宗門帳に押候外ニ印判拵
     置申間敷候若し子細候而印判
     替候ハゝ名主長百姓者役所迄
     可相断其外之百姓者名主長
     百姓江可断名を改候者早速
     被断五人組宗門帳江茂改候
     名を可記事

       一五人組宗門帳に、押し候外に、印判拵え

        置き申す間敷く候、若し子細候て、印判

        替え候はば、名主・長百姓は役所まで

        相断るべし、其の外の百姓は、名主・長

        百姓へ断るべし、名を改め候は、早速

        断られ、五人組宗門帳へも、改め候

        名を記すべき事 

 参考資料

 角川 日本地名大辞典 19 山梨県  角川書店刊

 角川 日本史事典 電子版       角川書店刊

 旧高旧領取調帳 中部編        近藤出版社

 関東甲豆郷帳             近藤出版社

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇      

  この『五人組帳』の画像は、10数年前に作ったホームページに掲載したものです。 
 以後、長い間放置したままの状態になっていましたが、昨年の9月末に、ホームページのコメント欄に、この画像を古文書の学習に利用して下さって居られる方からのメッセージが寄せられていました。
 ただ、丁度その頃、僕の父親が入院することになり、退院後も見守りの指示が出されていた為、半年以上に亘ってネットから遠ざかっておりました。

 漸く、少し落ち着いた後に、そのメッセージを拝読し、解読文をこちらのサブブログに載せるという約束をしました。

 しかし、なかなか思うように解読や画像処理の作業が捗らず、日数だけが経ってしまい、4月半ばという予定を守れず、誠に申し訳なく思っております。しかし、かなり遅れ馳せながら、漸く一部を纏めることが出来ましたのでアップすることにします。

 残りの分に就いては、少しづつで、何時とも決められませんが、出来るだけ継続してアップしたいと思います。


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laughty

風の森博物館」の記事 御連絡有難うございます。早速答あわせをしてみました。やはり間違いや思い違いを発見できました。なかなか上達しないものです。楽しみにしてます今後とも宜しく御願い致します。
by laughty (2016-05-12 08:02) 

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