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あひるの子―西美 常設展から― [国立西洋美術館]

 

               あひるの子.jpg

国立西洋美術館へ行くと、時間の都合にもよりますが、出来るだけ常設展示も見てくるようにしています。

特に好きな作品が幾つかありますが、その中でも、更に特別好きな作品は、上の図の「あひるの子」という作品です。

作者は、ラファエル前派の画家、ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829~1896)。

この作品が、どのような意図で描かれたのかは、どうもよくは解らないようです。

アンデルセンの「みにくいアヒルの子」を意識した作品ではないかという意見を、どこかで読んだような気もしますが、それはどうなのでしょうか。

原題は、「Ducklings」。
「Duckling」は、「あひるの子」ですから、複数形の「Ducklings」というタイトルが指し示すのは、この幼い女の子ではなく、画面の下方にいる、数羽のアヒルの子どもたちのことなのでしょうか。

ともあれ、あひるの雛の前にパンを持って立つ、決して裕福な家の子供ではなさそうな、この女の子の眼差しに、僕は心惹かれます。ですから、僕はこの絵の前で、何時の間にか長い時間を過ごしてしまうことがあります。

その日、いつものようにこの絵を見ていたら、多分6歳くらいの小さな男の子と、その父親とがやって来ました。
僕の後ろの方で、別の絵を見ながら、その男の子がお父さんに、一所懸命に絵の説明をしているようです。
やがて、「あひるの子」の前に来て、暫く眺めてから、「これは、ミレイ。ミレーじゃないね」と、言いました。
そして、別の絵に向かって、またお父さんに何か説明しながら、歩いて行きます。
「おまえ、すごいね。よく覚えたね」お父さんが、我が子の様子に感嘆している声を聞きながら、さっき男の子の言った言葉の意味に、僕は漸く気が付きました。

「あひるの子」を描いた画家、ジョン・エヴァレット・ミレイの名は、残念ながら日本ではそれほどには知られていないかも知れません。
でも、「落ち穂拾い」を描いたミレー「ジャン=フランソワ・ミレー」なら、大抵の日本人は知っているでしょう。
そして、ミレイとミレー。日本語で、普通に発音した場合、その違いはかなり意識していなければ、同じように聞こえてしまいます。
それを、その小さな男の子は、多分ちゃんと理解していたように、僕には思えました。

館内に置かれたチラシなどによれば、国立西洋美術館では、子供たちと親を対象にした、美術と親しむためのプログラムを実施しているようです。
もしかしたら、あの親子も、そうしたプログラムに参加しているのかも知れません。
どちらにしても、幼い頃から、押し付けや詰め込み学習でなく、自然に芸術と向き合えるような環境を作ることができたら、それはそれなりに素晴らしいことと言えるのだろうと思います。

ところで、国立西洋美術館は、設備改修のために、2009年5月まで 新館を閉鎖しています。
その為、常設展は規模を縮小しての展示となっています。

この「あひるの子」も、いつもとは違う場所に展示されていたため、暫く探しまわってしまいました。
確認したわけではありませんが、もしかすると一定の期間ごとの展示替えの可能性もあるかも知れません。

観に行かれる場合には、国立西洋美術館のサイトにて、充分にご確認をお願いします。

   http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html

 

 


タグ:ミレイ
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コメント 3

lapis

この「あひるの子」は、僕も大好きです。
国立西洋美術館に行ったらこの絵とモローの作品は出来るだけ見るようにしています。
by lapis (2008-04-18 22:10) 

sanesasi

たしかに 眼に吸い寄せられて いろいろ想像したくなります 
小さな男の子の 聞き流してしまいそうな一言から 深い意味を お感じになるとはさすがと感じ入りました
by sanesasi (2008-05-23 20:56) 

ナナ

「あひるの子」ってタイトルが何だかとても意味深いもののように見えてきましたよ
なんか、逆にミステリアス
by ナナ (2009-07-07 21:30) 

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